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2026/11/05

実家が兄弟の共有名義・借地のときの相続|解消方法と地主との交渉を川崎の弁護士が解説

この記事の結論

・相続した実家を兄弟の共有のままにすると、売却や建替えに全員の同意が必要になり、次の相続でさらに権利者が増えていきます。

・共有の解消には、遺産分割、持分の買取り、共有物分割訴訟などの方法があり、共有になった経緯によって使える手続が異なります。

・借地上の実家を相続するのに、地主の承諾や名義書換料の支払いは原則として不要です。ただし、土地を借りる権利が賃借権である場合、売却には原則として地主の承諾か裁判所の許可が必要です。

「とりあえず兄弟3人の共有名義にしておいた実家を、そろそろ売りたいが、一人が反対している」「父の実家は借地の上に建っていて、地主から名義変更料を払ってほしいと言われた」――不動産が絡む相続では、こうした相談が少なくありません。

この記事では、共有名義や借地の実家を相続した場合の注意点と解決方法を、不動産案件を数多く扱ってきた川崎の弁護士が解説します。

共有名義の実家には、2つのパターンがある

「実家が兄弟の共有になっている」と言っても、法律上は次の2つに分かれ、解消の手続が異なります。

  1. 遺産分割がまだ終わっていない共有(遺産共有):親が亡くなり、誰が取得するか決まらないまま、相続人全員のものになっている状態
  2. 遺産分割で共有に決めた共有(通常の共有):遺産分割協議で「兄弟3人の共有で取得する」と決めた場合など。遺産分割をしないまま、法定相続分どおりに共有名義で登記しただけの場合は、1の遺産共有のままです

1の場合は、原則として遺産分割(協議・調停・審判)で解消します。2の場合は、共有物分割(協議・訴訟)で解消します。なお、遺産共有と通常の共有が混在している場合には、相続開始から10年を経過し、相続人による所定の異議申出がないなどの条件を満たせば、共有物分割訴訟で遺産共有も含めて解消できる場合があります(民法258条の2)。不動産全体が遺産分割未了の場合は、10年を過ぎても原則として遺産分割で解消します。

共有のままにしておくリスク

  • 売却や建替えには、共有者全員の同意が必要(一人でも反対すれば進まない)
  • 共有者が亡くなるたびに、その子どもたちに持分が引き継がれ、権利者がねずみ算式に増える
  • 共有者の一人が住み続けている場合、使用料や固定資産税の負担をめぐって不公平感が生じやすい
  • 共有者の一人が認知症になると、売却がさらに難しくなる

共有を解消する主な方法

方法内容ポイント
持分の買取り共有者の一人が他の共有者の持分を買い取る価格の合意が鍵。不動産の評価が争点になりやすい
全体の売却全員で第三者に売却し、代金を分ける全員の同意が必要
持分のみの売却自分の持分だけを第三者に売る同意は不要だが、価格はかなり低くなりやすい
共有物分割訴訟地方裁判所に分割方法を決めてもらう現物分割、一人が取得して代金を払う方法、競売などから判断される
所在等不明共有者の持分の取得調査しても他の共有者やその所在が分からない場合に、裁判所の決定を得て持分を取得する2023年4月から利用可能。裁判所が定める金額の供託が必要。対象の持分が遺産分割未了の場合は、相続開始から10年経過後

話合いで解決できるのが一番ですが、こじれた共有関係は、訴訟の可能性を見せることで交渉が動くこともあります。遺産分割の審判で共有のまま分けられてしまう場合の注意点は、遺産分割調停がまとまらないとどうなる?で解説しています。

借地の上の実家を相続したら

親が地主から土地を借り、その上に自宅を建てていた場合、相続の対象になるのは「建物」と「借地権(土地を借りる権利)」です。土地そのものは地主のものなので、相続財産には含まれません。

川崎市や大田区、鶴見区でも、相続をきっかけに地主との関係が問題になることがあります。

以下では、主に土地賃貸借契約に基づく借地権を取り上げます。地上権などの場合は扱いが異なります。

地主の承諾や名義書換料は必要?

借地権を相続するのに、地主の承諾は不要です。相続は、借地権の「譲渡」には当たらないためです。地主から名義書換料(承諾料)を求められることがありますが、相続の場合、法律上これを支払う義務は原則としてありません。

ただし、次の点には注意が必要です。

  • 建物の相続登記を早めにする:亡くなった親名義の有効な建物登記に基づく借地権の対抗力が、相続人に引き継がれる場合があります。ただし、相続登記には申請義務があるため、期限を確認して手続を進めましょう(相続登記の義務化と期限)。
  • 地代の支払いを止めない:相続人の間で誰が借地権を取得するか決まっていなくても、地代は払い続ける必要があります。滞納すると、契約を解除される原因になり得ます。
  • 相続人以外への遺贈は別途確認する:遺言で相続人以外の人に借地権を遺贈する場合は、遺贈の種類や遺言の内容などによって、地主の承諾の要否が問題になります。事前に弁護士へご相談ください。

借地権を売りたいとき|地主の承諾か裁判所の許可

相続した借地の実家に誰も住まない場合、借地権付きの建物として売却する方法があります。土地賃借権の譲渡には原則として地主の承諾が必要です。承諾が得られない場合でも、買主が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないなどの条件を満たせば、裁判所に承諾に代わる許可を求めることができます(借地借家法19条)。

このほか、次のような解決方法も考えられます。

  • 地主に借地権を買い取ってもらう
  • 地主から底地(借地権の付いた土地の所有権)を買い取る
  • 借地権と底地の一部を交換し、それぞれが完全な所有地を持つ
  • 地主と共同で第三者に売却する

どの方法が有利かは、借地権の評価や地主の意向によって変わります。借地権の価格は地域や契約内容によって大きく異なるため、不動産鑑定士の評価も踏まえて検討することが大切です。

地代の値上げを求められたら

相続をきっかけに、地主から地代の値上げを求められることもあります。地代の増額は、固定資産税の上昇や近隣の地代の水準などを理由に認められる場合がありますが、地主の言い値に応じる必要はありません。合意できなければ、まず調停で話し合い、それでも決まらなければ裁判所が適正な額を判断します。

当支店の解決事例

※事件の特定を防ぐため、内容を一部簡略化しています。結果は個別の事情によるもので、同様の結果を約束するものではありません。

相続した借地について、地主との交換で所有地を取得

相続で取得した借地権について、地主から地代の値上げを求められたご相談です。交渉の結果、借地権と土地(底地)の一部を交換する契約を地主と結び、依頼者は敷地の一部を完全な所有地として取得しました。以後、地代を支払う必要もなくなりました。

10年以上動かなかった共有の土地を、1年足らずで解決

親族間で共有になったまま、10年以上処分できずにいた土地のご相談です。各共有者の意向と土地の評価を丁寧に整理して交渉を進め、1年足らずで円満に共有関係を解消しました。

このほかの事例は解決事例の一覧をご覧ください。

不動産が絡む相続は、当支店にご相談ください

当事務所は、創業以来、不動産に関する案件を数多く扱ってきた法律事務所です。その経験から、不動産を含む相続のご相談も多くお受けしています。

  • 共有物分割、借地権の売却・交換、地代の増減額など、相続後の不動産問題までまとめて対応
  • グループ内の不動産鑑定士・税理士と連携し、評価や譲渡所得税(売却時の税金)も踏まえて方針を検討
  • 遺産分割が審判に進む場合も、東京高等裁判所で判事を務め、家事審判の抗告審を多数担当した弁護士の知見を踏まえて対応

よくある質問

Q. 兄弟3人の共有名義の実家を売りたいのですが、一人が反対しています。
A. 全体の売却には全員の同意が必要です。話合いで解決できない場合は、共有物分割訴訟(遺産分割が未了なら遺産分割調停)で、裁判所に分け方を決めてもらう方法があります。

Q. 借地の上の実家を相続したら、地主に名義書換料を払う必要がありますか?
A. 相続による承継の場合、法律上の支払義務は原則としてありません。地主の承諾も不要です。

Q. 相続した借地権を売ることはできますか?
A. 土地賃借権の場合、原則として地主の承諾があれば売却できます。承諾が得られない場合でも、買主が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないなどの条件を満たせば、裁判所に承諾に代わる許可を求めることができます。

Q. 共有者の一人と連絡が取れません。
A. 調査しても共有者やその所在が分からない場合には、裁判所の決定を得て、その持分を取得する制度があります。また、所在が分かる共有者全員が一緒に不動産全体を売却することを条件に、所在不明の共有者の持分も第三者に売却する権限を得る制度もあります。いずれも、裁判所が定める金額の供託などが必要です。対象の持分が遺産分割未了の場合は、相続開始から10年の経過が必要ですが、遺産分割が済んで通常の共有になっている場合には、この10年の制限はありません。単に返事がない場合とは区別が必要です。

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監修:弁護士法人TLEO虎ノ門法律経済事務所 川崎支店 支店長 弁護士 我妻耕平(神奈川県弁護士会)

更新日:2026年10月20日(法令・制度は更新日時点の情報に基づきます)

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