この記事の結論
・遺産分割調停で合意できないと、手続は自動的に審判に移り、家庭裁判所の裁判官が遺産の分け方を決めます。
・審判に不服がある場合は、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に即時抗告をすると、高等裁判所が審理します。川崎・鶴見・大田区の家庭裁判所の審判は、いずれも東京高等裁判所が審理します。
・抗告審は、家庭裁判所での主張や資料が判断の土台になるため、調停の段階からの準備が結果を左右します。
遺産分割調停を何度重ねても、相手が譲らない。調停委員から「このままでは審判になります」と言われた。――そんなとき、この先どうなるのか不安に感じる方は多いと思います。
この記事では、調停が不成立になった後の審判、そして審判に納得できないときの即時抗告について、手続の流れと注意点を解説します。
目次
遺産分割調停がまとまらないとどうなる?
遺産分割調停で話合いがまとまらず、調停が不成立になると、改めて申し立てなくても自動的に審判の手続に移ります。審判では、裁判官が、当事者の主張や提出された資料、家庭裁判所調査官の調査結果などをもとに、遺産の分け方を決めます。
審判は、調停をした家庭裁判所でそのまま進むのが通常です。調停の申立先は、相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。例えば、相手方の住所地が川崎市なら横浜家庭裁判所川崎支部、横浜市鶴見区なら横浜家庭裁判所(本庁)、大田区なら東京家庭裁判所(本庁)が申立先になります。
図 遺産分割の手続の流れ(川崎・鶴見・大田区のどの家裁の審判も、不服申立ては東京高裁が審理)
相続人同士の話合い
調停委員会が話合いを仲介
裁判官が分け方を決める
横浜家裁・東京家裁の審判はいずれもここで審理
特別抗告は憲法違反、許可抗告は重要な法令解釈の問題など(高裁の許可が必要)
家庭裁判所の審判に不服があれば東京高等裁判所が審理し、最高裁判所に進めるのはごく限られた場合だけです。
審判で裁判官は何を、どの順番で確認するか
家庭裁判所の遺産分割手続では、一般に、次の順番で争点を一つずつ確定させながら進めます。前の段階が固まらないと次に進めないため、どの段階で争っているのかを意識することが大切です。
- 相続人の範囲:誰が相続人か(養子縁組の有効性、行方不明者の扱いなど)
- 遺産の範囲:何が遺産に含まれるか(名義預金など)
- 遺産の評価:不動産や株式をいくらと評価するか
- 各相続人の取得額:特別受益(生前贈与など)や寄与分(介護などの貢献)による調整
- 分割の方法:誰が何を取得するか
なお、遺産の範囲そのもの(たとえば「この預金は遺産か」)に深刻な争いがある場合は、家庭裁判所ではなく地方裁判所の訴訟で決着をつける必要があることもあります(使途不明金・使い込みの調べ方)。
遺産の分け方は4種類
| 分割方法 | 内容 | よく使われる場面 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 遺産をそのままの形で分ける | 預貯金、複数の不動産がある場合 |
| 代償分割 | 一人が不動産などを取得し、他の相続人に代償金を払う | 相続人の一人が実家に住み続けたい場合 |
| 換価分割 | 不動産などを売却し、代金を分ける | 誰も住む予定がなく、代償金も払えない場合 |
| 共有分割 | 相続人の共有のまま取得する | 他の方法が難しい場合(後の紛争の火種になりやすい) |
審判で代償分割が認められるには、代償金を支払う能力があることを示す必要があります。誰も代償金を払えない場合、裁判所が実家の競売を命じる審判を出すこともあります。当事務所は不動産案件を数多く扱ってきた経験から、競売より高く売れやすい通常の売却の段取りや、代償金の資金計画まで含めてご提案します(共有のまま残す場合の問題点は共有名義・借地の相続で解説しています)。
審判に不服があるとき|即時抗告
審判の内容に納得できない場合は、即時抗告という不服申立てができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期限 | 審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内 |
| 提出先 | 抗告状は、審判をした家庭裁判所に提出(審理するのは高等裁判所) |
| 費用 | 収入印紙1,800円分と郵便切手 |
| 審理する裁判所 | 横浜家庭裁判所・東京家庭裁判所の審判は、いずれも東京高等裁判所 |
2週間はあっという間です。審判書を受け取ったら、すぐに内容を検討する必要があります。
抗告審(東京高裁)の特徴
抗告審では、家庭裁判所での記録(主張書面や提出された資料)をもとに、審判の判断が適切だったかが審理されます。新たな主張や資料を出すこと自体はできますが、家庭裁判所の段階で十分に主張・立証していなかった点を、高等裁判所で一から覆すのは容易ではありません。
高等裁判所は、審判を取り消して自ら判断し直したり、家庭裁判所に審理をやり直させたりすることがあります。一方、最高裁判所への不服申立て(特別抗告・許可抗告)は、憲法違反や重要な法令解釈の問題などに限られ、事実の評価をめぐる争いは原則として高等裁判所が最終判断になります。
審判・抗告を見据えて、調停の段階ですべきこと
審判や抗告審の判断は、それまでに出された主張と資料が土台になります。調停の段階から、次の点を意識して進めることが大切です。
- 争点を段階ごとに整理する:相続人の範囲や遺産の範囲など、合意できる部分は早めに確定させ、本当の争点に集中する
- 主張は必ず資料で裏付ける:介護の貢献なら介護記録や費用の領収書、生前贈与なら通帳の履歴など
- 不動産の評価は根拠を持って示す:複数の査定書を比較し、必要に応じて鑑定も検討する
- 調停案を受けるかどうかは、審判になった場合の見通しと比べて判断する:見通しより有利な案を断って、審判でより不利な結論になることもある
なお、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を考慮しない扱いになります(民法904条の3)。ただし、期限内に家庭裁判所へ遺産分割調停・審判を申し立てていれば、手続中に10年を過ぎても、この制限は適用されません。2023年4月1日より前に開始した相続には、少なくとも2028年3月31日までの猶予期間があります。具体的な期限や対応は、相続開始日などに応じて確認することが大切です。
審判・抗告審を見据えた進め方は、当支店にご相談ください
当支店には、東京高等裁判所で判事を務め、遺産分割などの家事審判の抗告審を数多く担当してきた弁護士が在籍しています。審判や抗告審で、どのような点が問題になりやすいかを踏まえて、調停の段階から主張と資料を組み立てます(遺産分割協議のサポート)。
- 審判が出て、2週間以内に即時抗告すべきか迷っている
- 調停委員から審判への移行を示唆された
- 相手方が代償金を払えないと言い、実家の扱いが決まらない
このような段階の方も、お早めにご相談ください。調停の申立先など窓口の全体像は川崎・鶴見・大田区の相続、手続はどこの裁判所・法務局?をご覧ください。
よくある質問
Q. 遺産分割調停が不成立になったら、もう一度申し立てる必要がありますか?
A. 不要です。調停が不成立になると、自動的に審判の手続に移ります。
Q. 審判に不服があるとき、いつまでに何をすればよいですか?
A. 審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に、審判をした家庭裁判所へ抗告状を提出します。審理は高等裁判所が行います。
Q. 抗告審で新しい証拠を出すことはできますか?
A. 出すことはできますが、家庭裁判所での記録が判断の土台になるため、調停・審判の段階で十分に主張と立証をしておくことが重要です。
虎ノ門法律経済事務所 川崎支店のご案内
- 所在地:〒212-0013 神奈川県川崎市幸区堀川町580 ソリッドスクエア東館4階
- 電話:044-201-7561
- アクセス:JR川崎駅から徒歩5分(蒲田駅・鶴見駅からJR京浜東北線で1駅)
- 初回相談:60分無料(平日夜間・土曜日も事前予約で対応)
- お問い合わせ・ご相談予約はこちら / 弁護士費用
監修:弁護士法人TLEO虎ノ門法律経済事務所 川崎支店 支店長 弁護士 我妻耕平(神奈川県弁護士会)
更新日:2026年10月20日(法令・制度は更新日時点の情報に基づきます)