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2026/11/05

遺言で「兄に全財産を相続させる」と書かれていたら|遺留分の請求と期限を川崎の弁護士が解説

この記事の結論

・兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・親)には、遺言でも奪えない最低限の取り分「遺留分」があります。

・遺留分は、相続が始まったことと、遺留分を侵害する遺言や贈与があったことを知った時から1年以内に請求しないと、時効で消えてしまいます。

・生前贈与や不動産の評価によって金額が大きく変わるため、早めに専門家と計算することが大切です。

父が亡くなり遺言書を開けてみたら、「全財産を長男に相続させる」と書かれていた。生前に兄だけが自宅の購入資金をもらっていた。――こうした場合でも、あきらめる必要はありません。

法律は、一定の相続人に「遺留分」という最低限の取り分を保障しています。この記事では、遺留分を誰がどれだけ請求できるのか、いつまでに何をすべきかを、川崎の弁護士が解説します。

遺留分とは|遺言でも奪えない最低限の取り分

遺留分とは、一定の相続人に法律が保障している、相続財産の最低限の取り分です。遺言や生前贈与によって遺留分より少ない財産しか受け取れなかった人は、多く受け取った人に対して、不足分を金銭で支払うよう請求できます。これを遺留分侵害額請求といいます。

2019年7月1日以降に開始した相続では、遺留分の不足分は金銭で請求します。そのため、実家を兄が相続しても、他の兄弟は遺留分に相当するお金を兄に請求する形になります。2019年6月30日以前に開始した相続には、改正前の遺留分減殺請求の制度が適用されます。

誰に、どれだけの遺留分があるか

遺留分があるのは、配偶者、子(子が亡くなっている場合は孫)、親などの直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分の全体の割合は、親などの直系尊属だけが相続人の場合は財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1です。これに各人の法定相続分を掛けたものが、一人ひとりの遺留分になります。

相続人の組み合わせ各人の遺留分
配偶者と子2人配偶者4分の1、子は各8分の1
子2人のみ子は各4分の1
配偶者と父母配偶者3分の1、父母は各12分の1
父母のみ父母は各6分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者2分の1、兄弟姉妹はなし

たとえば、遺産が6,000万円で、相続人が子2人(兄と弟)、遺言で兄が全財産を取得した場合、弟の遺留分は6,000万円の4分の1で1,500万円です。弟は兄に1,500万円を請求できます(生前贈与などがない単純な例です)。

期限は「知った時から1年」|最も注意すべきポイント

遺留分侵害額請求には、厳しい期限があります(民法1048条)。

期限起算点
1年相続が始まったこと、および遺留分を侵害する遺言や贈与があったことを知った時から
10年相続開始の時から(知らなくても経過する)

1年以内にすべきことは、相手に「遺留分侵害額を請求する」という意思を伝えることです。郵送する場合も、原則として期限内に相手方へ通知が到達する必要があります。後で争いにならないよう、配達証明付きの内容証明郵便で送るのが一般的です。家庭裁判所に調停を申し立てただけでは、この意思表示をしたことにはならない点に注意してください。

なお、請求の意思表示により発生する金銭の支払請求権にも、別途、消滅時効があります。現行法では、原則として権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年の、いずれか早い時点で時効が完成します。適用される法律や起算点を確認し、請求した後も放置しないことが大切です。

遺留分を請求する流れ

  1. 遺言・遺産・生前贈与の調査:遺言書の内容、預貯金や不動産、過去の贈与を確認します。
  2. 内容証明郵便で請求の意思表示:期限内に、多くもらった相手に請求の通知が届くよう手配します。
  3. 交渉:金額や支払方法を話し合います。
  4. 調停:まとまらなければ、家庭裁判所の遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。
  5. 訴訟:調停でも合意できなければ、地方裁判所などで訴訟を起こします。

遺産分割と違い、遺留分は調停が不成立になっても家庭裁判所の審判には移りません。訴訟で決着をつけることになります。

生前贈与はどこまで含まれる?

遺留分の計算では、亡くなった時の財産に、一定の生前贈与を加えます(民法1044条)。

  • 相続人への贈与:原則として相続開始前10年以内の、生計の資本などとしてされた贈与(自宅の購入資金、事業資金など)
  • 相続人以外への贈与:原則として相続開始前1年以内のもの
  • 遺留分を侵害すると双方が知ってした贈与:時期を問わず含まれる

「兄が20年前に自宅の購入資金をもらっていた」という場合、遺留分の計算の基礎には原則として加えられませんが、あなたが遺産分割で取得すべき額の計算を通じて、請求額に影響することがあります。生前贈与の扱いは、専門家でも検討を要する論点です。

不動産の評価で、請求額は大きく変わる

遺留分の金額は、遺産の評価額で決まります。預貯金と違い、不動産には決まった値段がありません。固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)、実際の売買価格(時価)では金額が大きく異なり、遺留分の計算では原則として相続開始時の時価を基準にします。

川崎市や大田区の駅に近い土地のように地価の高い場所では、評価方法の違いによる差額も大きくなりやすく、どの評価を主張するかで請求額が大きく変わります。

当事務所は、もともと不動産に関する案件を数多く扱ってきた事務所です。グループ内の不動産鑑定士と連携し、不動産の評価を踏まえた請求額を算定します。

誰に、どの順番で請求するか

遺留分は、多くもらった人なら誰にでも自由に請求できるわけではありません。法律で順序が決まっています(民法1047条)。遺言で財産を受け取った人(受遺者)が先に負担し、それでも足りない場合に生前贈与を受けた人が負担します。贈与が複数あるときは、新しい贈与を受けた人から順に負担します。

計算と請求の順序を誤ると、請求額を取りこぼしたり、本来請求できない相手に請求してしまったりするおそれがあります。当支店の我妻耕平弁護士は、遺留分の法律実務と税務を解説した専門書『遺留分の法律と税務』(商事法務)を共著しています。複雑な計算が必要な事案こそ、ご相談ください(遺留分侵害額請求のサポート)。

川崎・鶴見・大田区の方の調停の申立先

遺留分侵害額の請求調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で決めた家庭裁判所に申し立てます。

相手方の住所地調停の申立先
川崎市横浜家庭裁判所 川崎支部
横浜市鶴見区横浜家庭裁判所(本庁)
東京都大田区東京家庭裁判所(本庁)

たとえば、あなたが川崎市幸区、遺言で全財産を取得したお兄様が大田区に住んでいる場合、申立先は東京家庭裁判所です。窓口の全体像は川崎・鶴見・大田区の相続、手続はどこの裁判所・法務局?をご覧ください。

遺留分の請求は当支店にご相談ください

  • 遺留分の専門書『遺留分の法律と税務』(商事法務)を共著した弁護士が在籍
  • 東京高等裁判所で判事を務めた弁護士が在籍し、訴訟に進んだ場合の見通しも踏まえて方針をご説明
  • 不動産案件の経験を生かし、不動産を含む遺産の評価から請求額を算定
  • 税理士と連携し、遺留分の支払いに伴う税金の問題もあわせて検討

生前の預金の引き出しが疑われる場合は、使途不明金・使い込みの調べ方もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 遺言書に「長男に全財産を相続させる」とあります。次男の私は何も請求できませんか?
A. 請求できます。子には遺留分があり、遺言があっても、遺留分に相当する金銭を長男に請求できます。

Q. 遺留分の請求はいつまでにすればよいですか?
A. 相続が始まったことと、遺留分を侵害する遺言や贈与を知った時から1年以内です。相続開始から10年が経つと、知らなくても請求できなくなります。

Q. 兄弟姉妹にも遺留分はありますか?
A. ありません。亡くなった方に子や親がおらず、兄弟姉妹が相続人になる場合でも、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

Q. 実家しか遺産がなく、兄に払うお金がないと言われました。
A. 遺留分は金銭での請求ですが、支払う側の事情によっては、裁判所が支払期限の猶予を認めることがあります(民法1047条5項)。実家の売却や分割払いなど、現実的な解決方法を一緒に検討します。

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監修:弁護士法人TLEO虎ノ門法律経済事務所 川崎支店 支店長 弁護士 我妻耕平(神奈川県弁護士会)

更新日:2026年10月20日(法令・制度は更新日時点の情報に基づきます)

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