解決事例
2025/08/21

遺言の無効を証拠を広く収集し、交渉で遺言によらない分割を実現した事例

遺産分割 60代 女性 パート
遺産の種類 不動産、現金、預貯金、有価証券
依頼者の立場 被相続人の娘
被相続人 依頼者の父
紛争相手 依頼者の兄弟
回収金額・経済的利益
代償金として約1億円

依頼前の状況

ご依頼者様の実父が亡くなられ、遺産相続が始まりました。しかし、父が残した遺言書には、遺産のすべてをご依頼者様の弟に相続させると記されていました。ご依頼者様は、普段から「遺産は公平に分けてほしい」と話していた父が、そのような内容の遺言を作成したとは考えにくいと感じていました。

さらに、遺言が作成された時期には、父はすでに重度の認知症が進行しており、施設に入所していました。まともな判断や日常的なコミュニケーションも困難な状態だったため、ご依頼者様は、日頃から施設に出入りが多かった弟が遺言作成に関与したのではないかと疑念を抱いていました。

この状況に納得がいかず、法律に基づいた平等な遺産分配を希望され、当事務所にご相談にいらっしゃいました。現在、遺言が存在するため、遺産はすべて弟の名義で管理されており、不動産やこれまでの取引があった金融機関、証券会社以外の財産状況は全く不明でした。

依頼内容

ご依頼いただいた内容は以下の通りです。

  • 作成された自筆の遺言書の無効を主張すること。
  • 法定相続分に基づいた遺産の分配(ご依頼者様が弟から代償金を受け取る形でも可)。
  • 上記がうまくいかなかった場合に、遺留分侵害額の請求を予備的に行うこと。

対応と結果

受任後、私たちはすぐに受任通知を送付せず、以下の調査を並行して行いました。これは、相手方による調査妨害や証拠隠滅を防ぐためです。

  • 父親の遺産に関する徹底的な調査: 預金の取引履歴、不動産登記、固定資産台帳、証券会社の残高証明書などを収集しました。
  • 認知症の進行状況を把握するための資料調査: 要介護認定の記録、主治医のカルテ、投薬内容、実施された知能検査の結果などを詳細に調べました。
  • 担当医へのヒアリング: 医師から直接、父親の認知症の具体的な状況や判断能力について聞き取りを行いました。

これらの調査の結果、亡くなられた父親の遺産をほぼ特定することができ、さらに遺言作成時には、その内容を理解し、有効な遺言を作成する能力がなかったことが明確に判明しました。

調査結果と私たちの主張をまとめた通知書をご依頼者様の弟に送付したところ、弟側から、遺言の存在を事実上無視して遺産分割協議に応じるという提案がありました(最終的には、弟がすべての遺産を取得し、ご依頼者様には代償金を支払うという形でした)。

その後、不動産の評価や遺産中の使途不明金についての詳細な協議が行われ、結果としてご依頼者様は、想定していた遺産総額の約半分を代償金として受け取ることができました。

今回の事例では、遺言の有効性を争うために、認知症の進行状況に関する詳細な証拠収集と分析が重要でした。もし、ご家族の遺言に関して疑問や不安をお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。

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